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2003.3.23 映画

「A」

BOX東中野でやってる「アクションドキュメンタリー」という企画上映を見に行った。何本か見たが、今回は、そのうちで最も印象に残った、森達也監督の「A」と「A2」という作品について2回に分けて書こうと思う。

まずは「A」である。

「A」は、1995年ごろ、オウム真理教の内部に入って撮影されたドキュメンタリー。つまり、今までのメディアでは見られないようなところも、森監督は特別な許可を得て撮影している。ほぼ主役的な扱いの、荒木広報担当とも、なかなか中身の濃いインタビューをすることができている。

監督と教団との信頼関係が興味深い。こうした信頼を勝ち得るためには、とりわけオウムのような密封性の高い集団においては、制作者にもしっかりとした信念が必要になってくるだろう。

また、取材を進めていくにつれて明らかになっていく、荒木広報担当の内面の揺れや、不安といった感情が非常に興味深い。家族との関係、自らの性体験についての告白、「尊師」への思い、これからの自分…。教団の中で、おそらく最も社会と触れることの多かった荒木という人物が、心の奥底で何かの「間違い」や「ばかばかしさ」に気付き始めているのではないか、と感じさせられる。

最もそれがおもしろい形で出ていたのが、森監督が荒木広報担当に「30年後は何しているだろうか?」と尋ねたとき、「うーん、分からないなあ」と悩んでから「あっ、アルマゲドンで世界がなくなってるんでしたね」と二人で大笑いするシーン。そこには「人間・荒木」に向き合う監督が居て、決してほかの多くのマスメディアのように「変態・凶悪犯罪者」扱いをしていないからこそ表出される真実というものがある気がした。

天秤が釣り合うように、正反対のことが存在することによって、保たれる秩序や世界(真実)があるのではないか、ということを思う。オウム排斥の報道ばかりが過熱するなかで、その天秤を水平するために、森監督はたったひとりで立ち向かった。僕はその勇気と行動力にとても感動した。サティアンを取り囲む報道陣を、サティアンの内側から撮っているシーン、衝撃的だったなぁ。