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2010.12.11

宮本常一が撮った昭和の情景

  • 宮本常一が撮った昭和の情景 上巻
  • 宮本常一が撮った昭和の情景 下巻

民俗学者の宮本常一氏が、調査のために日本各地をまわったときに撮影した写真集。昭和30年代の写真を集めた上巻と、昭和40年代の写真を集めた下巻。むかしの日本の写真を見るのは楽しい。今暮らしている風景と、昔の風景というものが、本当にちゃんと繋がっているのかが、僕の中ではとても曖昧である。変な話だけれど、むかしの写真は白黒なので、昭和初期の世界って、色があったのかなぁとか、バカみたいな疑問を、頭のどこかで持っている。

しかし民俗学者というのは、同時に旅行者でもあるのだなぁと思う。とにかく色んなところを歩いて、よく見て、よく聞く。全国のいろいろな風習に関する知識が頭の中にあるから、家の屋根の形や形状を見ただけで、「西日本の家の形は東北と比べて…云々」と、思考をスタートさせることができる。ただの写真だけではなくて、こうした解説を一緒に飲み込んでいくと、想像がどんどんと形になっていって、なるほど、昔の世界と、今の世界というのはつながっているよねえ、と、ようやく頭の中で解決できるのだ。

ちなみにこの宮本常一氏は武蔵野美術大学の先生で、僕が学生だった頃には、すでに亡くなられていて、そのお弟子さんみたいな先生が民俗学の授業を受け持っていた。だから、授業内容はもっぱら宮本氏が撮ったドキュメンタリーとか、写真のスライドショーだったりして、毎回おもしろかった。特に鷹狩りのドキュメントは忘れられない。今はほとんど継承者はいないようだけれど、そういう、どこかの村で細々と何百年も続いている風習を見つけてきては、じっと観察する。その姿勢の先には必ず、宝物のような面白いものが眠っているのだなぁと思わされた。