広島市内探索・食の旅路
広島市内にあるお好み焼屋が並ぶ「お好み村」に行った。広島では、お好み焼きはれっきとした食事であって、主食として食べられるのである。
そこに行く途中のえびす通りで、地元では誰もが知っているという「広島太郎」なる人物を見た。チェックのハデな袋を30個くらい体に巻いて歩いている、ホームレスだ。強烈な容姿で確かに1度見たら忘れられない。
広島太郎に関してはさまざまな人から噂話を聞いた。いわく、実は大金持ちだが敢えて自由を求めてああいう生活をしてるんだとか、ある日に外車を乗り回しているのを見たとか、昔は●●という会社の社長だったとか、先日は肺炎で入院したらしいとか。うわさ話だけでパーソナリティが確立されている。
お好み村では、ネーミングの良さで「水軍」という店に入った。狭い店内に、3人ほどの店員が、汗をだらだらたらしながらせっせと手際よくお好み焼きを焼いている。ひとりで10枚くらいの面倒を見ていたが、あれはなかなか神技めいている。僕もバイト先の創作居酒屋で韓国風お好み焼きを焼くことがあるが、せいぜい4枚が限界だ。焼く動作も速い、手の動きが洗練されていて美しかった。僕はいちばん高い「全部乗せ」を頼んだ。厚さにして4,5センチはあった。おいしかった。
その後、広島城に行くと、城の門のあたりに、ひとつだけやけに垂れ下がった木を見つけた。枝がすべて下の方向に向けて成長していて、ちょっと気味の悪い木だった。近づいてみると、ひとつの立て看板、「被爆樹木」。広島に落ちた原爆に耐えきった木なのだそうだ。そう聞くと、この木の奇妙なうねり具合と、新しく生えてくる枝の方向の下向きなのが、原爆の威力というか恐しさを感じさせる。圧倒されながら、しばらくずっとこの木を眺めていた。