夢の跡
新横浜から、9時23分発の新幹線に乗り込んだ。みっつならんだ席で、通路側の席だった。窓側のふたつは、新横浜から乗り込んだカップルが座った。
音楽も持っていかなかったので、かなり暇だった。窓を見ようにも、カップルがあんなことやこんなことをしていて目をそむけなければいけなかったので、真っ直ぐしか向けなかった。席を倒そうにも、うしろの席にヤクザの親分みたいなのがビール5,6本置いてガハハハと笑っていたので倒すに倒せなかった。
だからかなり疲れる姿勢で考え事などをしながら4時間半を過ごした。よく考えればこんなふうに時間を過ごすことなど滅多に無かった。
降りかえるとあっという間に広島駅に着いた。迎えに来てくれた親友とは、10年ぶりの再会。しかし何も変わっていなかった。広島駅自体が全然変わってなかった。ありきたりな表現だが、まるでタイムスリップしたかのようだった。
それから、僕は新井口という駅に向かった。ここは僕が3歳のときから幼稚園を卒園するまで過ごしたところである。おたふくソースの工場がある駅です。
そして、今回の目的のひとつである、「自分の夢に出てくる場所をビデオに撮る」ということをした。つまりそれは、自分の中での、精神的な基盤になっている場所であることを意味している。
懐かしき住居や、幼稚園、公園、道、すべてを撮りつつも、意外なことに夢に出てくるのはそういうところだけではなかった。自分とはまったく関わりのない建物や、1回も使用したことのない(はずの)バス亭、遠くに見えるマンションの倉庫、知らないひとの家の庭、なぜにこんなところの夢を見るのか、不思議でならないようなところばかりだった。
これらは、僕にとってなんなのだろうと思った。夢でいつも歩いている場所(それもどこだか分からない場所)を、実際に歩いてるというのは、魅力的というより、むしろ僕を混乱させた。