生協の白石さん
読んだ本
『生協の白石さん』
いまさらですが。なにぶん図書館で借りてるもので。
東京農工大工学部の大学生協に勤める白石さん。生協に置かれるリクエストカード「ひとことカード」に、大学生はな~んにも考えずに好き勝手に書いて、それに白石さんがやさしく答える。
農工大工学部といえば、ダメ工房員のこうしましょう君の出身校。彼はいま、静岡は浜松で、携帯の内部にマイクロ大根畑を開墾している最中です。こうしましょう君つながりで、何人かの農工大生ともお知り合いになれた。僕は農学部のキャンパスにしか行ったことが無いが、あの大学のほわ~んとしたのんびり雰囲気は素敵だった。
だからというわけではないが、この本から伝わるのんびりな空気は、まさにキャンパスライフ!という感じで、とてもあたたかい。しかもノスタルジックという感じでないのが良い。ノスタルジックとはまた全く別の感覚で、「そうそう、学生てのはこういう質問するよね!」という感じなのだ。
商業ベースでは、なんでもかんでも極度に泣かせたり、感動させたり、とか、そういう押し付けがましいものが多い気がして、それは極彩色のケバケバしいものを見せられているようで、内容を聞くだけで胃がもたれてしまう。本書はそうした雰囲気とは確実に一線を置いていて、そこに好感が持てる。なぜ一線が置かれているかと考えると、それは現実に行なわれていた日常のスケッチだからだろう。おもしろくなりようがない。日常というものは積み重ねに意味があるわけで、問答をひとつひとつを見ても、どれも大したことは無いのだ。白石さんの回答を見て爆笑したり、感動したりといったことは皆無である。どれも淡々と過ぎ行く毎日の一コマに過ぎない。
しかしその積み重ねというのは、実はかなりのパワーがある。これはジョナス・メカス監督の『リトアニアへの旅の追憶』という日記映画が証明している。本書の場合、まず、その寛容さへの感動である。もちろん白石さんも人間だから、「豆?」という質問に対して少なからず憤りを持ったことは正直に記されてある。生協の売り上げのために商業的なことも書いている。しかしそれを踏まえても、寛容である。それが実にやさしくて、あたたかい。
たぶん学生も、質問内容なんかどうだっていい。やりとりを楽しんでいる。本書はどうしても、ブログ発の企画本という色眼鏡で見られるわけだけれど、それを超えて、現在を切り取るひとつの記録としても有意義な企画だったように思えた。ブログ管理者・上條氏の、誰かに書かされたような後書きには目をつぶるとして、全体にものすごくのびのびしている。こういうのびのび、不規則生活者には、健康的で良いです。








