2007.5.29

殯の森

殯の森 [DVD]
BS-hiで、なんとあの河瀬直美監督の『殯の森』が放送されていた。びっくり。興味があったので、見てみた。この先、ラスト付近のこと書いてますので悪しからず。

彼女の作品は、『につつまれて』『かたつもり』『萌の朱雀』を見てきた。最初の2作は、僕の好きなジョナス・メカス監督の作品を髣髴とさせる素敵な作品だった。

けれども『萌の朱雀』が、どーも、ピンと来なかった。あんなに美しい作品なのに。僕はドキュメンタリーが好きで、その延長でイラン映画が好きなのだが、彼女の作品はそれに近いものがあると思う(というかそもそもドキュメンタリー作家だしね…)。だから僕も好きなはずなのだが、どうもしっくり来ない。その理由もよく分からないままなのである。

で、今回の映画である。

話は、認知症のおじさんと、介護する女性の交流。認知症のおじさんは妻を亡くしていて、それと彼の症状との関連もうかがわせる。介護する女性は介護初心者ということで、最初はなかなかうまく交流できない。それで、おじさんが妻の墓参りに行くといって森の奥へ行き、追いかける介護女性と迷ってしまう。

前に見た作品よりも、ずいぶん見やすくなっていた。『萌の朱雀』は、静的に演出する、という感じがあったと思う。それは僕には退屈だったのだが、今回は動的に演出する。だから単純に、ストーリーが動く。そこに、彼女特有のドキュメンタリー的な映像が入ってくる。とりわけ、老人介護施設の描き方は見事だ。

気づいたのだが、彼女は一貫して、音で演出する人だなぁと。『につつまれて』のラスト、電話の声が延々と続くシーンの切迫感には心が動かされたが、その使い方はドラマチックで繊細である。しかしやはりドグマ的な手振れ感は健在で、美しいモチーフやストーリーが技術によって邪魔をされている感がしないでもなかった。

そして中盤以降の山のシーン。山の奥をさまよってさまよって…そのうち夜が来て、捜索隊のヘリが上空を飛び…ここらあたりのシーンは、映画として見るのは難しかった…詳しくは言えないが知っている人は察してもらいたいです。

だから思うのかもしれないが、その果てに見つけた、山の奥の墓場のような場所に着いた界隈のシーンで、魂のダイナミズムや生の美しさを見出したい気持ちは分からないでもない。なんて美しい映画だろうと思う。しかし生命というのはそういったダイナミズムや美しさだけだろうか、とも思う。 映画の冒頭で、住職は「生きていることは実感だ」と語った。その通りだ。しかし、ある意味で差し迫った状況で、穴掘って、オルゴール鳴らして、大木に抱きついて、木々の間から射す太陽を眺めて、うやうやしく「殯」なんていう小難しい単語を紹介して(…その言葉を、彼女はどこまで使いこなしているのだろう?)…そうした様式的なことで語られる美しい「生と死」に、僕は”実感”を受け止めることはできず、むしろなにか抵抗感を覚えたのは確かだ。

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